hakuam120のブログ

日々のこととか、体験談とか。書こうと思った時に書いてます。不安障害、双極性障害II型。

桃源郷を越えて、彼女は

笠原桃奈。神奈川県出身、2003年10月22日生まれの20歳。モーニング娘。などを抱えるハロー!プロジェクトのグループ「アンジュルム」を2021年11月に卒業し、現在「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」というアイドルオーディション番組(通称:サバ番)に練習生として出演している。

彼女は2015年4月に研修生としてハロプロの一員となった。実力をメキメキと伸ばして行った彼女は、1年後の2016年に行われたハロプロ研修生実力診断テストでベストパフォーマンス賞を受賞し、同年にアンジュルムに加入することとなった。ヘルシーな大人っぽさとあどけなさを併せ持ち、そして確かな実力のあるメンバーだった。年齢を重ねるにつれ、より大人な雰囲気が増し、アンジュルムの中でも若いメンバーであったにも関わらず、その年齢らしからぬ雰囲気でグループにかっこよさと強さをもたらしていた。 しかし、ステージを降りると一変、やかましさと多少ぶっ飛んだ行動が面白い、年相応の女の子だ。北海道に行くのにパスポートが要ると思っていたり、キッズケータイしか持っていなかったのでダンスの練習動画を見られなかったりした加入直後のエピソードから、先輩と遊んでいたら勢い余って後ろの衝立を倒してしまったり、コンサート中に衣装の袖をちぎってしまったり、なぜかヒールを折ってしまったりという破天荒なエピソードもあり、そのパワフルなキャラクターは皆に愛されていた。

2021年、彼女は高校3年生の頃に卒業を発表した。 大抵のメンバーは20代前半、中には20代後半で卒業するメンバーもいる。そんな中、早すぎる卒業発表に予想外で驚いたファンも多いだろう。

ここで少し話は変わるが、私が笠原桃奈というアイドルに出会って、好きになるまでの話を少し。コロナ禍にハロプロに出会い、曲の良さとパフォーマンスの素晴らしさにどんどんハマっていった。そんな頃リリースされたアンジュルムの新曲「愛されルートA or B?」という楽曲でメインを張っている彼女に衝撃を受けた。ゆるくウェーブのかかった黒のロングヘア、眉上ぱっつんの前髪、黒のタイトなミニワンピースに高いピンヒール。そして首元にはチョーカー。MVでは最初はモノクロだからわからなかったが、全身黒の中そのチョーカー、そしてリップだけが赤く際立っていた。なんだこの雰囲気のある美人は、と。調べたところ、まだ高校3年生だという。美人顔で背も高く大人っぽくて、シンプルながら一般人ではなかなか着こなせない衣装を完全に自分のものにしている。そしてこれも一般人なら履いて歩くだけでも苦労するような高いピンヒールのパンプスを履いて当たり前のように踊っている。本当に素敵なアイドルに出会ってしまった、推すしかない…と思ったのだった。彼女が卒業を発表したのはそれからわずか数ヶ月のことだった。まだ若い彼女が卒業するという衝撃と、せっかく見つけた「笠原桃奈」というアイドルをほとんど応援できないまま卒業を見届けることが悔しくて悲しかった。

そうして2年の月日が経ち、韓国のサバ番「PRODUCE 101」の日本のガールズ版である「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」(以降、日プ女子)の開催が発表された。参加者は、NiziUを生んだ「Nizi Project」、Kep1erを生んだ「Girls Planet 999」に参加し、惜しくも脱落してしまった練習生や元アイドルから、そういった経歴のない初心者まで様々だ。最初は「ふーん…」くらいにしか思っていなかった。韓国のサバ番は「PRODUCE 48」をなんとなく追っていた程度で、日プに至っては全く見たことがなかった。しかし、その参加者の中の1人に、見覚えのある名前があった。笠原桃奈である。私があのとき見つけた、もっと早く見つけたかったと思った彼女が、再び表舞台に姿を現したのだった。

ハロプロアイドルということで、彼女の注目度はかなり高かった。ハロプロはスキル軍団、パフォーマンスの質が高いアイドルとして日本のアイドル界で知られている。それだけ期待値も高い一方で、なんで元ハロプロがわざわざ日プ女子に出るのか?どうせハロプロオタクの組織票狙いだろう、と参加にネガティブな意見を持つ人もいた。しかし、磨かれたスキルを如何なく発揮し、観る人を惹きつけるパフォーマンスに、次第に「彼女はすごい」と言う人が増えていった。 きっと卒業後もスキルと表現を磨き続けてきたのだろう。グループバトルやポジション評価では、少しだけだがアンジュルムにいた頃を知っている私も見たことがないほど、スキルの高さはもちろんコンセプトを完全に消化した抜群の表現力を魅せてくれた。番組を見るたびに、本気でこのオーディションに懸けていることが伝わってくる。

彼女の卒業コンサートのタイトルは、自身の名前にも使われている「桃」という漢字の入った「桃源郷」だ。桃源郷とは、俗界から離れた別世界、理想郷という意味を持つ。ユートピアとほぼ同義の意味と言っていいだろう。先輩後輩の垣根なく仲良く明るい、雰囲気のいいグループとして知られるアンジュルム。頼れる先輩がいて、可愛い後輩がいて、笠原桃奈にとってアンジュルムというグループはまさに桃源郷だったはずだ。おそらくそのままアンジュルムに属していれば、間違いなくグループの核となるメンバーになっていたと思う。しかし、彼女は居心地のよい理想郷を去り、更なる高みを目指して挑戦することを選んだ。その覚悟は相当なものだと思う。

私はハロプロが好きだが、元ハロプロメンバーだからという理由で彼女を応援しているわけではない。パフォーマンスに懸ける強いこだわり。明るく周囲を元気にするキャラクター。周囲を気にかけ思いやる優しい人柄。紡ぎ出される知性と強い意志が感じられる言葉の数々。笠原桃奈笠原桃奈であるからこそ、応援していてデビューしてほしいと願っている。彼女が桃源郷を越えた先にある景色が、より明るく輝いているものでありますように。

桃奈、絶対にデビューしよう!