hakuam120のブログ

日々のこととか、体験談とか。書こうと思った時に書いてます。不安障害、双極性障害II型。

扁桃腺を摘出しました〜術後3日目から退院まで〜

術後3日目

朝起きたときの痛みはそんなに強くなかったのですが、やはりご飯を食べた後に痛みがきてつらかったです。口内炎も治る気配がなく、染みるし食べ物が食べづらい。夕方急に、これほんとに治るのかなと不安になって過呼吸を起こしてしまいました…。出血等はありませんでした。

服薬はいつもの通り朝夕に痛み止めと整腸剤2錠ずつ、午後に痛みが強くなって追加で痛み止めを出してもらいました。点滴は今日はありませんでした。左手が解放された感。

術後4日目

明け方に咳が出て目が覚めました。喉がイガイガする感じ。お茶を飲んでマスクをかけて眠りました。食事はお粥に柔らかめのおかず。バナナが毎食のように出てくるのですが、これが喉に引っかかって飲み込みづらいのなんの…。食後の痛みがひどいのでいつも残していたら、夕食には栄養補助飲料が「ゆっくりでいいからちゃんと飲んでくださいね」という旨のメッセージとともに出てきました(ちゃんと全部飲みました)。そして口内炎が痛くてたまらないので、夜看護師さんに相談して塗り薬を出してもらうことになりました。

久しぶりに病棟から出て、病院の売店(セブンイレブン)でおやつを買ってきました。プリン、プリン、杏仁豆腐。喉に優しい3点セットです。アイスは部屋に冷凍庫がなくて保管に困るので買いませんでした。相当痛みが強い時もプリンなら美味しく食べられます。カラメルが喉や口内炎にしみることがあるので、カラメルが薄味、または入ってないやつの方がいいと思います。メイトーのなめらかプリンおすすめ。

服薬は痛み止めと整腸剤を朝夕2錠ずつ。昼間にどうしても痛むので頓服でもらった痛み止めを整腸剤と一緒に飲みました。

術後5日目

喉の痛みは相変わらず。食後が一番痛いです。ですが経過は良好なようで、予定通り明日退院できることになりました。口内炎は塗り薬を出してもらってだいぶ楽になりました。夜、痰を出したときに微量の血が混じっていたのですが、すぐ止まったようなので心配ないとのこと。

服薬は前日と同じです。

術後6日目(退院)

術後の経過も順調だったので、予定通りの日に無事に退院しました。とはいってもまだ痛みは残りますが…。術後しばらくはパンやスナックは控えるよう注意を受けました。荷物をまとめ、1週間お世話になった病院を後にしました。

無事に家に帰ったのも束の間、ふとした瞬間に脚に発疹が出ていることに気がつきます。家族に見てもらうと背中の方も全身発疹が出ているとのこと。喉の痛みに意識がいっていたのと、腰のあたりがなんかちょっと痒いなーと感じたくらいで、腕とかよく見える範囲には出ていなかったので病院では気づかなかったのですが…。病院に電話をすると、痛み止めの薬の副作用かもしれないからその薬の服用を中止するように言われました。痛みが出たときはいつも頭痛時に飲んでいるロキソニンを代用していいとのこと。まさかこんなことが起こるとは…。何はともあれ、無事に退院できて少しほっとしました。

扁桃腺を摘出しました〜手術当日から術後2日目〜

手術当日

ついに手術の日がやってきました。朝6時、検温や血圧の測定をし、手術着に着替えます。そして点滴。全身麻酔の点滴の針は普通の針より痛いみたいですがわたしはあまり違いを感じませんでした(ここ半年くらいで点滴さしすぎて慣れてしまったのかも)。しばらくして主治医の先生や手術室の看護師さんがいらっしゃって、手術までの細かい流れを説明してくれました。

術前に立ち会いにきてくれた母と話していたら移動の時間に。この時は歩いて手術室に向かいました。重たい扉が開けられ、いよいよ手術室に。白い空間に銀色の器具がぴかぴか、無機質空間でした。でもなぜかアンパンマンのぬいぐるみが置いてありました。患者さんの不安を和らげるためかな。頭からキャップを被ったら手術台へ。手術台に乗り、心電図のパッドやら酸素マスクやら色々取り付けられました。とてもテキパキと進む。慣れているんだろうな〜と。一方のわたし、心拍が徐々に早くなるので「緊張しとる〜?」って看護師さん達に言われて少し照れ。そんなこと言ってるうちに深呼吸してくださいねーって言われて数秒、目の前が眩しくなって夢の世界へ……。全身麻酔、眠気が来るというか一瞬で意識が飛んで気がついたら手術終わってたって感じでした。何が起こったかよくわからなかったです。「終わりましたよ〜」と声をかけられましたが麻酔が効いているのか頭がぼんやりしていて、いつのまにか病室に戻っていました。そういえば手術前の「音楽何かけますか〜?」はわたしにはありませんでした。ヒーリングミュージックがかかってた。聞かれたらパスピエかけてくださいって言おうと思ってたのになー。

しばらくしてすごく気持ちが悪くなって何度か嘔吐。麻酔の影響みたいです。あとなんかすごく暑かったのでアイスノンを持ってきてもらいました。この日はとにかくずっと眠っていました。途中でトイレ等に立ち歩けるかのチェックと飲水チェックをしたくらい。あと、手術後摘出した扁桃を見せてもらいました。直径2〜3センチほどの小さなピンク色の肉の塊。こんな小さな器官が悪さしてたんか…としみじみしました。取った扁桃は病理検査に出されたようです。

術後1日目

手術が終わった次の日。この日の朝から食事が出ます。食事といってもソフト食なので、ほとんど重湯状態のお粥とか具なしの味噌汁とか豆腐とかプリンとか、噛まなくても食べれるくらい柔らかいものばかりです。あと傷口に染みるものは食べられないので酸味や辛味のあるものは出てきません。それでも、久々に塩気のあるものを食べられてちょっと嬉しかったです。お魚のすり身を柔らかく固めたソフト食、やわめのかまぼこみたいで美味しかったです。食べてるときの喉の痛みは度重なる扁桃炎でいくらか慣れているので大したことないんですが、器具で固定されていたであろう舌の付け根あたりが口内炎できたみたいになっているので痛くて違和感があります。

服薬は1日2回、朝は痛み止め4錠整腸剤2錠、夕に痛み止めと整腸剤2錠ずつでした。しっかり効いているのか、痛みは大したことないです。点滴は1日2袋。あと1日4回、アズノールといううがい薬でうがいをします。喉からの出血が怖くて、思うようにうがいできないですが…ちゃんと1日4回うがいしました。

術後2日目

朝起きて、昨日より喉の痛みが強いと感じました。朝食は昨日のソフト食から極軟菜(といってもじゃがいもとか大根とか普通に固形で出てくる)に変わっていて、おかゆも三分粥から七分粥になっていたのですが、喉の痛みが強くかなりゆっくりでないと食べられません。昨日の食事は20分ほどで完食できましたが今日は倍くらいの時間がかかりました。朝食後痛み止めを飲むと少し楽になりました。痛かった食前に痛み止め飲んでもいいと言われたので、夕飯から食前に飲むことにしたのですが、夕食に出た蒸したサツマイモはどうしても喉に引っかかってしまって残してしまいました…。出された食事残すのが嫌で頑張って食べきってたんですけどね。あと相変わらず舌が痛いです。傷口はきれいなようで、経過は順調そうです。自分で鏡で喉を見てみたら、白いカサブタが出来てきていました。

そして今日はシャワーを浴びれました!清拭はしていましたが完全にはスッキリしないし、髪はベタベタするしで早くシャワーを浴びたいと思っていたので嬉しかったです。さっぱりしました。

痛み止めと整腸剤は朝晩2錠ずつ、うがいは変わらず1日4回。点滴も2袋です。

扁桃腺を摘出します 〜入院・手術前の準備〜

こんにちはどうも。 前回(扁桃腺を摘出します 〜手術する決心をするまで〜 - hakuam120のブログ)は、手術を決めたきっかけ・経緯について書かせていただきました。ここでは、入院・手術の前にしなければいけないこと、しておいたことについて書こうと思います。

術前検査

前回のブログでも触れていますが、わたしが受ける口蓋扁桃摘出手術は全身麻酔をかけた上で行う手術です。そのため、身体に異常がないか、全身麻酔に耐えられる状態かを検査する必要があります。手術の約1か月前に、術前検査を受けてきました。検査内容は採血、採尿、胸部レントゲン、心電図。いずれも受けたことのある検査だったので、特別なことはありませんでした。全ての検査を終え、結果が出た後、耳鼻咽喉科の外来で手術についての説明を受けました。全身麻酔の影響で手術後吐き気が出たり、口に装着する器具の影響で口内炎や口角に痛みが出たりする可能性があることなど、手術後に考えられる症状について説明していただきました。また、新型コロナウイルス関係で入院前日(わたしは月曜入院で前日は病院お休みなので、直近の金曜)にPCR検査とCT検査を受けに来てくださいと言われました。同意書などの手術に必要な書類をもらい、入院や高額医療費控除について専用の窓口で説明を受けました。この日は以上で会計を終了して帰宅。朝の9時から正午過ぎまで病院に滞在、待ち時間がとても長くてくたびれました…。

コロナウイルス関連

この時期に入院するということは、病院にコロナウイルスを持ち込まないようにしなければいけないということ。そのため、おそらく通常入院する時にはしないであろうことをすることになりました。

まず、PCR検査。めっちゃ隔離された部屋に案内され、検査を行いました。看護師さんもガウン、フェイスシールド、キャップ、手袋などフル装備でした。基本はインフルエンザの検査と同じ感じで、鼻に長い綿棒を突っ込んで粘液を採取する検査でした。この手の検査、鼻がツーンと痛くなる感じがとても苦手なんですよね…思わず涙がにじみました(20代女性)。 あとは肺炎を起こしたりしてないかを確認するため、CTもとりました。検査機器の中にウィーンと入っていく感じがなんとなく近未来的で嫌いじゃないです。CTが終わったら、会計して帰宅です。PCR検査やCTの結果で、陽性だったりコロナウイルスへの感染が疑われる場合にはその日のうちに病院から連絡が来ると言われていましたが、何もなかったので予定通り入院しました。

そして、毎日の体温チェック。手術2週間前から、病院所定のチェックシートに体温と咳や鼻水、咽頭痛、倦怠感の有無を書くように指示されました。また、不要不急の外出を避けること、人の沢山集まる場所に行かないこと、同居家族以外の人と会食をしないようにすることなど、コロナウイルスに感染しないように行動するようにも言われました。実際入院前2週間、犬の散歩と病院以外で外出はしませんでした。県内でもクラスターがちらほらと発生していて、何かあると嫌なのでおうちで犬と戯れていました。犬かわいい。最高。

入院までの準備

次に、コロナ関連以外にも、入院手術にあたって自分なりにいくつか準備したこと、気をつけたことについて。

まず、健康管理をきちんとすることを意識しました。犬の散歩に行ったり、YouTubeのHIITトレーニングをおこなったり、しっかりと食事を取ったり…。食事と運動という基本的なことですが、入院中は運動量も減るし体力も落ちるので、入院前に軽い筋トレをしておいたり、無理にダイエットしようとせずにきちんと食べるのが大切だと思います。手術後しばらくは食べられるものも限られてくるので、食べたいものは入院前までに食べておきましょう。もちろん睡眠も大事!

(ちなみにわたしはまりなさんがYouTubeに投稿されたHIITトレーニングを毎日やっていました。4分のトレーニングから始めて、慣れたら5分とか10分とかのトレーニングもやったりしてました。たかが4分で、と思いますが、結構いい感じに汗かけます。まりなさんのHIITトレーニング4分版のリンクはこちらhttps://youtu.be/UZJOLmMDqu8)

そして、入院までに必要になりそうなものを揃えました。とりあえずずっとベッドの上で生活することになるので、退屈をしのぐための娯楽は必須です。本や雑誌を新しく買い、ソシャゲやYouTubeを気兼ねなく使えるようにポケットWi-Fiをレンタルしました。これらとテレビがあればいい感じに暇つぶしができるかなと思います。

その他、入院時に必要になると思って病院に持ってきたものをリストアップします。(着替えや洗面用具など基本的なものは除きます)

・ドライヤー(病院にはドライヤーがないか、あっても風力が弱かったりすると思うので)

・拭き取り化粧水・コットン(術後しばらく入浴したり、顔を洗ったりできないので、拭くだけである程度スキンケアができるものがあったらいいと思った)

・泡で出てくる洗顔料(泡立ての手間が省けて楽そう)

・スプーン(術後しばらくは流動食みたいな食事になるので、箸だけでは食べにくいかなと思った)

・プーさんのぬいぐるみ(母にはバカにされたけど、かわいいだけじゃなくてベッドで横になりながらスマホいじったり本読んだりするときにクッションになってくれるので機能性抜群なんですよね)

退院して、これあればよかったなーとか、これ別にいらなかったなーと思うものがあったらまた書こうと思います。

入院(手術前日)

いよいよ入院です。朝9時に入院患者受付で受付を済ませ、入院患者用のリストバンドを装着します。フェスとかでつけてもらうやつと大体おんなじです。麻酔科の診察を受け、病室に移動します。院内着やタオルを受け取って、諸々署名して、いつも飲んでる薬の確認やらが終わればあとは特に何もない、自由な時間です。入院準備を手伝いに来てくれた母も帰宅し、ひたすら暇を持て余しています。お昼ご飯食べた後に耳鼻咽喉科の診察を受けて、帰りにアイス買って食べました。イタリアンプリンアイス美味しかった。

ちなみに今日は普通のご飯を食べてますが、21時以降は絶食、明朝6時以降は絶飲食になるそう。絶食は多分耐えられるけど、飲み物飲めないのきついな〜と思いつつも、無事手術が終わるまでの我慢です。お風呂は今日の夕方入ったらしばらくは入れないっぽいので、念入りに(?)洗ってきます。

手術は明日の朝イチ。ついにこの日が来てしまった…という感情です。緊張しますが、これからのためにもがんばってきたいと思います。

扁桃腺を摘出します 〜手術する決心をするまで〜

毎日暑いですね。 新型コロナウイルスの流行も全く収束の兆しが見えず、猛暑とコロナ関係のことでニュースを見ているだけで鬱屈とした気分になります…。

さて、Twitterではボソッと呟いているのですが、私、扁桃腺を摘出することになりました。全身麻酔、およそ1週間の入院を要する手術です。全身麻酔を伴う手術は22年間生きてきて初めてです。すでに今から緊張しているし、できればこんな大変な時期に入院して手術なんてしたくないですが、健康上の理由だし仕方がない。せっかくだから、しばらくは語り草になりそうなこの経験をブログに書き記しておくことにしようと思います。

わたしと扁桃

まず、わたしが扁桃腺摘出手術を決めるまでの経緯について。

昨年12月から、扁桃炎で高熱を出すことが急激に増えました。12月頭、年末年始、2月頭に1回ずつ、39℃超えの熱と喉の痛みでしんどい思いをしました。特に酷かったのが年末年始。この時は扁桃炎を拗らせて膿瘍を作ってしまったために、入院して点滴治療を受けなければならなくなりました。何故せっかくのお正月なのに点滴を繋がれてベッドに横たわっているのかと虚しい気持ちになることが多々ありました。まあ家にいても特段これと言ってすることもなかったと思うのですが…

2月に扁桃炎になり、年末に入院した病院を受診した際、先生から口蓋扁桃摘出手術、つまり扁桃腺を摘出するという提案を受けます。

扁桃腺取るって、それって大丈夫なの?

その提案を聞いてわたしがまず思ったのは「扁桃腺って取っていいものなのか?」ということ。免疫器官として働いているはずの扁桃腺。そんなもの取ってしまったら風邪やら感染症にかかりやすくなってしまうんじゃないの?と疑問を抱きました。ただ、どうやらこの手術で取る口蓋扁桃がなくても、咽頭部には他に免疫機能を果たしてくれる器官があるようで、摘出して免疫力が大幅に落ちることはないようです。むしろ、扁桃炎を繰り返している人は口蓋扁桃が菌の温床となっていることがあるようで、手術せずに放っておくと腎臓にまで負担がかかることがあるそうです(医学的な知識がほぼ皆無なのでこの辺の説明が100%正しいか自信はありませんが大体こういうことだったと思います)。わたしの場合、年末から月一回のペースで3ヶ月連続で扁桃炎を起こしていて、さらに抗生剤の内服が効かないほど症状がひどいこともあったため、扁桃腺は摘出したほうがいいという判断に至ったようです。

手術を決めた理由

全身麻酔の手術なんて怖いし、絶対に痛い…お金もかかるし、不安で戸惑う気持ちはとても大きかったですが、わたしは手術を受けることにしました。それは、やはり扁桃炎を繰り返すことが嫌だったからです。高熱が出て身体はだるいし、喉が痛くて食欲も出ない。動けないほどつらいので、学業、そして将来は仕事にも影響が出ます。しかも、腎臓に悪い影響もある…。免疫器官どころか病気の温床になっている扁桃腺を自分の身体に抱えておくことは、何一つメリットがないと感じました。家族も絶対に今取ったほうがいい、お金も工面できるから、長期休みがある大学生のうちに手術しようと言ってくれたので、決心がつきました。

家族や病院の先生と話し合い、長期実家に滞在できる夏休みの期間に、手術の予約を入れました。実は一度、コロナウイルスの流行があるから手術を延期しようかという話が出たのですが、7月頭にやはり酷い扁桃炎になってしまい、一刻も早く手術をしたほうがいいと考え、予定通り手術を行うことになりました。

今回はここまで。次は手術・入院前の流れについて書こうと思います。

ライブに行けなくなって、今

2017年3月31日。わたしが初めて「ライブ」に行った日である。大好きなバンド、パスピエの全国ツアーが発表され、行きたいと思いながらも今までライブに行ったことがないために不安な気持ちもあり迷っていたところに、そのツアーの名古屋公演に大学の先輩が行くと聞いて、一緒に行ってもらってもいいですか!と強引に頼み込み、急いでチケットを確保してライブに参加することになった。

会場でグッズを買って、ホテルに戻り早速買ったばかりのTシャツとタオルを身につけた。もう一度会場に戻り、先輩と離れ(チケットは別々で取ったので整番も全然違ったのです)、フロアへ続く階段に作られた待機列に並ぶ。周りの人に整理番号を聞いて大体自分はこの辺かと思うところで待機する。開場と同時に列がゆっくり進みだす。チケットとドリンク代の500円を握りしめながら前へ進む。「番号○○○番までの方どうぞー」、とうとう会場に入れることになった。スタッフさんにチケットと500円を渡し、ドリンクチケットを受け取る。当時はライブ用のサコッシュなど持っていなくて、大きめの荷物を持ってきてしまったため、コインロッカーに荷物を預ける。そしてフロアに足を踏み入れる。

想像していたより、ずっと広かった。既にもうたくさんの人がいて、最前あたりはかなり人が密集していたが、真ん中あたりは人がいるもののまだスペースに余裕がある感じだった。何も知らないわたしはとりあえずドリンクを引き換えに行って、受け取ったオレンジジュースをその場で一気に飲み干し(緊張で喉が渇いていた)、上手側の真ん中あたりの列に自分の居場所を確保した。

まもなくSEが流れ出し、メンバーが登場する。スマートフォンの画面越しに見ていたパスピエのメンバーが、目の前に…イヤホンで聴いているあの音が、声が、生で自分の耳に入ってくる。そのゾクゾクとした感覚は忘れられない。なっちゃんの声は高く綺麗で、力強く。丁寧に作られた演奏はCD音源かと思うほど。しかし、生音の音圧や勢い、巧妙なアレンジがライブ感を生み出す。大好きな成田さんが、ほんの数メートル先で、弾けるような笑顔で鍵盤を鳴らしている…。ライブって、こんなにも楽しくて感動的なものなのか…と終始圧倒されていた。

それ以来、わたしは生の音楽体験、ライブやそれに準ずるイベントに行くことが大好きになった。住んでいる長野県には好きなアーティストがライブに来ることがあまりないので、大抵東京・関東方面か名古屋へ遠征する。 会場へ行くために電車に乗る機会が増えて、東京の電車や地下鉄に少し詳しくなった。カプセルホテルにも泊まった。ベッドくらいしかない狭いキャビンの中は、自分だけの秘密基地のようでワクワクした。1人でホテルにも泊まった。朝食バイキングで自分でも引くほどたらふく食べたりもした。名古屋でライブがあった次の日、バスが出るまで時間があって科学館のプラネタリウムに行ったら、疲れからか上映時間をほとんど寝て過ごしたこともあった。 友達もたくさんできた。最初はライブに行っても1人でドキマギしていることが多かったが、隣でライブを見る友達がいたり、フロアに入ったら偶然知っている方が近くにいたりなんてこともよくあることだった。ライブ前や後にご飯を食べたりお酒を飲みに行ったり、デパートでお化粧品をみたりした。学校というコミュニティの中以外であまり友達ができたことがないわたしが、同じアーティストが好きというきっかけでSNSで出会った人と楽しく過ごしている。それがすごく新鮮で楽しくて、いつしかなくてはならないものになっていた。

そんな大好きなライブの予定が今、全くないのである。昨今の新型コロナウイルスの影響で、ライブハウスは三密状態で危険だ、コンサートは大勢の人が集まって密室で行われるから危険だと言われ、2020年内に決まっていたライブはほぼ中止または延期を余儀なくされた。それは仕方ないことだと思うし、この状況で好きなアーティストがライブを開催したとしてもわたしはきっと行かないと思う。あと少し辛抱すれば、また元の通りライブに行けるのだから、今は出来るだけ感染予防に努めて大人しくしていようと。ただ、やはり寂しいし物足りない。遠征に向かうドキドキも、ライブ前の高揚感も、好きな曲を演ってくれたときの感動も、曲前のアレンジで次はなんの曲だろうと考えるワクワクも、終わった後の耳鳴りと心にじんわり広がる充足感も、ライブを通じてできた友達と話したりご飯を食べたりすることも、帰りのバスの中でのノスタルジーも、今は何にもないのだ。従来のようなライブの開催が難しくなってしばらく経って、それに気づいた。しんどいときも、ライブがあるから頑張ろうと思ってたんだと、気分が晴れないときも、ライブで心を動かされていくらかすっきりとした気持ちになって切り替えることができていたと。早く元の人が密集してぎゅうぎゅうのライブハウスに戻りたいと、改めて強く思った。2020年、ひたすら家で過ごす夏。